激短集
r。
「だーかーらーさー、お前のrの発音、変。」
「しかたねぇだろ、ぜんっぜん違う発音なんだから。イギリスだって、フランス語話すとき変よ?」
「んー…」
「大目に見てよ。」
フランスは、そう言って、料理に没頭し始めた。
なんだかいいにおいがする。
嫌味のように綺麗に全部できあがってゆく
シンプルな緑のエプロンの結び目がむかつく、
その異様に完成度の高い鼻歌がむかつく
「くそう、お前なんて嫌いだ。」
「はぁ!?お前、俺の特製フルコースいらないわけ?」
「それはいる。」
「なんだよもー、今日のお前なんなんだよ。」
「知らないよ。」
気づいたときには、多分もう遅かった。
Tu me manque
「だからさ、そう言う意味じゃねぇんだって。」
「なんやっちゅーの。気にしてへんからもういいよ。」
「気にしてるじゃん、そう言ってる時点でさー。」
なにやら彼は、俺の言ったことが気にくわないらしい。
すごくいうのがこっぱずかしい台詞なのに一蹴しやがってこんちくしょう。
Tu me manqueはI miss youなんだっちゅーの。
主語がTu(君)だからといって、
「お前俺のことすきなんだろう」みたいな意味では決してない。
あー、もー、どうしてわかってくれんかね。
「もうええよ。ロマーノと遊ぶー」
彼はすねて行ってしまった。
引っ込みがつかなくなっただけかもしれないが、
なんだかなー、もー。
役者パロ 別ルート
「だって貴方が殺したのでしょう?」
場末の、安っぽいラブホテルで抱き合った後、彼はそう言った。僕はといえば、煙草で一服していて、彼のとろとろした台詞を、頭の片隅で吃驚しながら聞いていた。
「何を言い出すんだい、いきなり。」
彼は俯せに寝ていたベッドの中で寝返りを打った。やけにぱりっとしたシーツが、彼の直線的な体に巻き付いて、少しよじれる。抱き合って、一眠りしたのに、シーツはまだごわごわなままで、休憩のつもりだったのにいつの間にか宿泊になっていて、まぁべつにそれは困らないんだけど、何から何まで安っぽかったので、彼の言ったその台詞も、あまりに三文小説のようで、本当に吃驚した。
あーだとかうーだとか、そんな気のないただ声帯が震えただけの音が、彼の口から漏れて。僕はにっこり笑って彼に答えた。
「だって貴方が殺したんです。」
「誰を?」
「彼を。」
「貴方が突き落としたんでしょう。彼を。」
「どうしてそんなことがわかるのかな。」
「だって物理的に貴方しか居ないのです。」
「気持ちじゃない?」
天文学者パロスピンオフ
BLUE
「牡牛座のプレアデス星団なんかは、双眼鏡で一番綺麗に見えるんだよ。」
彼はいつもそうやって話し始める。それからいくつかの付加情報を加える。例えばこの例なら、この星団は、ギリシア神話の七人の姉妹になぞらえて名付けられた、だとか、星団の周りには「鏡に息を吹きかけたような、にじみ」と成るガスがある事や、この星団の周りにあるのは殆ど青い恒星だ、という事などだ。
「余り大きな望遠鏡だと、全部離れちゃうしね。」
彼はコーヒーのカップを唇に当てた。彼が余りにもコーヒーを慈しむように飲むので、私はその中に星でも入っているのではないかと思っていた。彼は本当にコーヒーが好きだ。砂糖を沢山入れるのが好きらしく、ナターリヤ嬢はいつも彼には砂糖投入済みのものを運ぶらしい。「ナターリアは僕の好みをよく分かっているから」と彼は笑った。
私はその苦い液体を胃に流し込んで、彼に聞いた。
「貴方は何故そんなに星が好きでいられるのですか。」
「うん?この星にいるのが宇宙人だらけだからだよ。」
「…は?」
「いいかい、この星にある全ての物質とか元素は、外からやってきたモノなんだ。現行の理論だとね。」
「はぁ。」
つまり地球が出来たときにそもそも地球としてそこに存在したモノは無いのだから、全て外から生まれた訳だ、と彼は説明する。私はぼんやりとその話を聞いた。
「はぁ、だから宇宙人。」
「そう、我々はみんな、宇宙人だ。」
音楽的な試みで失敗
恋とは全く素敵じゃない!
(あ、)
(彼の瞳が黒いので、僕を反射している。)
(揺れてる。)
(自分の目って、初めてこんなにみたかも)
(嫌な目つき)
(彼の目が白と黒とではっきりしてる)
(揺れてる)
(嫌な目つき)
(気持ちいい)
(彼も、これと同じような目で他の人を抱くんだろうか)
(なんか吐き気がする。)
(揺れてる)
(ぞくぞくする)
(ぞわぞわする)
(息が熱い)
(声が聞こえる)
(でも何を伝えたいのかわからない)
(声はぼんやりとする)
(息が熱い)
(気持ちいい)
(首締めて、苦しそうにしている顔を見ながら)
(中に出すって、なにコンプレックスっていうのかな)
(揺れてる)
(嫌な目つき)
(気持ちいい)
(ぞくぞくする)
(あ、)
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